学会の震災対策

学会の災害対策

現在、日本精神保健社会学会は、NPO法人ヘルスカウンセリング学会と連携し、被災地への心の支援に関して、以下のことを計画、実施している。

  1. 災害メンタル対策を学会ホームページに掲示し、情報提供している。
  2. NTTと協同で、岩手県、福島県の避難所との遠隔カウンセリングシステムを構築している。
  3. 青少年のための携帯サイト(サミーネットワーク)に、学会ホームページ掲載の災害メンタル対策を下記のように漫画入りで4月に掲載します。
  4. 避難民を抱えた被災地以外の避難施設で、災害カウンセリングを提供するシステムの構築をする。 災害に伴う心の支援は、これまでの神戸震災支援の経験から、
     ■傾聴支援−訴えを傾聴するサービスの提供、
     ■災害ストレスやメンタルヘルスに関する講演、
     ■セラピー支援−パニック、強迫性障害を含む不安障害や気分障害や心的外傷症候群への支援
    にわかれる。
  5. 被災地への直接訪問カウンセリングは計画中である。
  6. 「震災後の心のケアを通して未来の活力をつくる」などの論文を全国レベルの雑誌などで発表し、復興を応援する。

避難所での心の支援実践報告

ストレスを力に〜「心のケア」ボランティア〜

津波に追いかけられながら危機一髪で助かった小4の女の子、夜が怖くて眠れません。 原発のすぐ近くの建物にいた75歳の女性、着の身着のままで、5箇所も避難所を転々としてきました。肩に手を掛けた瞬間泣き出しました。75歳の男性は淡々と話されていましたが、涙が・・初めて泣いたよ、と。こみ上げてくるものを抑えながら、たくさんの方々のお話を聴かせていただきました。

今日31日、全員が次ぎの避難場所に移られました。必死の中の笑顔をありがとうございました。

(ヘルスカウンセリング学会理事 佐野幸子)

つくば地区避難所の心の支援

つくば地区避難所の心の支援

災害メンタル対策

2011年3月11日に起きた、東北太平洋沖地震。
私たちはこれから、どのような気持ちでこの震災と向き合っていけばよいのでしょうか。 筑波大学大学院宗像教授が提唱する、災害メンタル対策5カ条をご紹介します(携帯サイト・サミーネットワークより)。

  1. 自分たちの立ち直り力を信じ、良い予期をしてみる

    災害時、とくに見通しが立たない状況では、悪いことばかりを考えやすくなります。

    ですが、悪い予期だけでなく、良い予期をしてみましょう。良い予期をするだけで、安心・楽しさ・快感をつくりだす脳内の快感物質ドーパミンの分泌が増加します。

    ドーパミンは、結果ではなく、希望や期待、信念などの良い予期をすることで分泌される性質があります。

    良いことを試しに考えてみましょう。圧倒される苦しみからラクになれます。

    わたし達人類は誕生して以来今日まで、幾多の災害や戦争などの困難を乗り越えてきました。

    わたし達には必ず、困難を乗り越え回復する力が備わっています。

    時間はかかるかもしれませんが、この窮地から必ず立ち直れる力があると信念を持って、希望を捨てないことが大切です。

  2. 気持ちの分かり合えるひとと喋ろう

    悪いことを少しでも予期すると、それだけで、肩こり・不眠・胃痛・頭痛など苦しみをつくるノルアドレナリンが分泌されます。

    そんなとき、悪い予期を仲間や話を聴いてくれる人に喋るという咀嚼(そしゃく)行動をするだけで、ノルアドレナリンが減少し、身体もこころもラクになります。

    喋る相手がいないときは、独り言でも、メモや絵にかくという行動でもよいでしょう。

    自分ではどうすることもできないという無力感がつのってくるとノルアドレナリンだけでなく、脳内でストレス(副腎皮質)ホルモンがでて、扁桃体が興奮し嫌悪感を起こす情動(恐れ、怖さ、恐怖感)が生じます。その情動で前頭脳が占領されると正しい判断ができず、思い込みやパニックが生じやすく、自分で問題を現実的に解決できなくなってしまいます。

    だから、怖かった体験や悲しかった体験は親族、仲間、ボランティアなど気持ちを分かり合えるひとに語り、泣きたい時は思いっきり泣きましょう。その涙からストレスホルモンが排出され、恐怖感や悲しみ、怒りなど嫌な感情が薄れていきます。

    また、嫌な気持ちでもそれを抑えずにしっかり感じて、文字や絵で表現し、発散することで感情は処理され、次に何をすればいいかを現実的に考えられるようになります。

    わたし達は、周囲からの無関心な状況や孤立している状況下にいるよりも、周りの人の愛情や支援を感じることで精神的な打たれ強さを得て、困難な状況下でも前向きにやっていこうという気持ちになれるものです。

    決して一人ではなく、仲間とつながっているということを意識しましょう。

  3. 心に浮かぶ良い気持ちや1日1つの小さな愉しみを見つけよう

    自分の心に浮かぶ良い気持ちを大事にしましょう。感謝の気持ちや小さな幸運の喜び、安らぎのもつすばらしい気持ちを見つけるのもよいでしょう。

    また1日に1つだけでも自分たちのできる小さな愉しみを見つけてみましょう。

    避難所などで長期に不自由な生活を続けると、拘束ストレスやエコノミー症候群(狭いところで身体を動かさず、ジーッとしていたりすることで起こる静脈血栓塞栓症)になりやすくなります。

    それらの予防も兼ねて、仲間と簡単な運動(呼吸法、気功など)をするようにしましょう。また趣味仲間を持つなど、家族や仲間と愉しめる日課をつくり、生活にリズム感を持つようにすると、精神を安定させる作用を持つセロトニンが分泌され、生きる力が湧いてきます。

  4. 追い込まれても、穏やかに現実的に対処する

    災害時、見通しが立たない状況での思い込みやパニックを防ぐにはとりあえず、「しばらくの間は様子見を決め込む」ことが大切です。

    また先に述べた「お喋りやグチる咀嚼行動」や、「1日の小さな愉しみ」を生活に取り入れたり、追い込まれた状況で「まあいいか」とつぶやくことも効果的です。特に生真面目な人は、進んでやってみましょう。

    そして冷静になれたところで、今何をしたらいいか、どうすべきか・・・を考えます。優先したほうがいいと思うことが何かひらめけば、まずはそれをやりましょう。

    今までに得た価値観や信念は、究極の見通しのつかない状況では、まったく通用しないものです。

    冷静になった時のひらめきを信じて、できることからはじめましょう。

  5. 災害がもつ社会的、個人的意味を考える

    災害時、なぜ自分だけがこんな目に遭うのかと恨んだり、こうすれば良かったと後悔したり、そういった行き場のない後悔や恨みは結局は内にこもってストレスを増やすことになります。

    「今おかれている境遇は決して無駄ではなく、社会的にも、個人的にも意味があることなのだ」と言い聞かせてみましょう。

    まず、社会的な意味。

    今回の東北太平洋沖地震では、地震や津波によって原子炉での災害が引き起こされましたが、チェルノブイリ事故の影響がもたらしたヨーロッパの環境政策以上に、これからの日本は原子力に頼り過ぎない発電システムに移行することになるでしょう。

    また、個人的な意味としては、見通しの立たない困窮状況を体験した者こそが感じることができる自分の「生きる意味」や「使命」に気づけるようになるでしょう。

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